2020年東京五輪を見据えたインフラ整備
2020年の東京五輪に向けた競技会場の建設プロジェクトが進む一方で、同大会を見据えた交通インフラ整備が本格化しています。東京都心と羽田空港を結ぶ新線開設計画のほか、五輪開幕に合わせて山手線・京浜東北線の品川̶田町駅間での開業を目指す新駅計画が進行中。また、2020年ごろの完成を目指す東京外郭環状道路(外環道)、そして各高速道路をつなぐ首都圏中央連絡自動車道(圏央道)など、首都圏の輸送効率向上のカギとなる3環状道路の整備計画も進められています。
2020年の東京五輪に向けた競技会場の建設プロジェクトが進む一方で、同大会を見据えた交通インフラ整備が本格化しています。東京都心と羽田空港を結ぶ新線開設計画のほか、五輪開幕に合わせて山手線・京浜東北線の品川̶田町駅間での開業を目指す新駅計画が進行中。また、2020年ごろの完成を目指す東京外郭環状道路(外環道)、そして各高速道路をつなぐ首都圏中央連絡自動車道(圏央道)など、首都圏の輸送効率向上のカギとなる3環状道路の整備計画も進められています。
北海道、北陸、九州と各地で整備新幹線の延伸工事が進められているほか、2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の工事も進行しています。その総事業費は8.3兆円から 9.9兆円とも試算される巨大プロジェクトで、品川̶名古屋間285.6kmのうち約86%にあたる246.6kmをトンネル区間が占めており、2015年12月から山梨県の南アルプストンネルで本格工事がスタートしています。 当社は2016年8月に「特機エンジニアリング部」を発足させ、同部に「トンネル課」と「水処理課」を設置し、今後増加する整備新幹線、リニア中央新幹線、各幹線道路のトンネル関連工事について、グループ企業との連携で全方位の対応ができるよう体制強化を図っています。
2025年国際博覧会(万博)の開催が決定し、開催地の大阪でも建設需要が活況を呈しています。経済効果が約2兆円と試算される万博は東京五輪後の景気浮揚策とも位置付けられ、開催経費3,000億円のうち1,250億円が会場建設などに投入される見込みです。 会場となるのは大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま:総面積390ヘクタール)です。現在、夢洲へのアクセスは道路トンネルに限られているため、約2,800万人と試算される万博来場者を運ぶ輸送手段として大阪メトロ中央線、京阪中之島線、JRゆめ咲(桜島)線など各鉄道の延伸計画が検討されています。また、同地ではカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業も同時に目指しており、今後、湾岸エリアの再開発を含めたインフラ整備が加速すると予想されています。
日本のインフラ老朽化が進行しています。建設後50年以上が経過するインフラの割合は73万カ所ある道路橋の25%、1万カ所以上あるトンネルの20%、5千カ所ある港湾岸壁の17%にも及び、今後はさらに増加すると予測されています。国土交通省によると、今後30年で必要となる道路や河川などインフラ12分野の維持管理、更新費用は最大 194兆6,000億円になる見込みで、鉄道分野を加えるとさらに38兆4,000億円増加すると推計。しかもこの数値は施設が劣化して機能に不具合が生じる前に修繕する「予防保全」 を前提としており、施設の劣化が進んだ段階で補修する 「事後保全」では90兆円ほど多く費用がかかるとしています。 国土交通省の管轄以外でも、NEXCO3社で約3兆円、 首都高速道路、阪神高速道路を合わせて1兆円と大規模 な高速道路の更新計画が進められています。
2018 | 2023 | 2033 | |
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道路橋 | 25% | 39% | 63% |
トンネル | 20% | 27% | 42% |
河川管理施設(水門等) | 32% | 42% | 62% |
下水道管きょ | 4% | 8% | 21% |
港湾岸壁 | 17% | 32% | 58% |
出所:国土交通省資料「社会資本の現状と将来」を基に作成
こうした現状を踏まえ、政府が200兆円規模の巨額支出を打ち出した「国土強靭化」、その一環である「インフラ長寿命化基本計画」に基づいて、すでに全国各地でインフラの整備・補修に関する公共事業計画が進められています。
当社グループは、インフラ設備の維持補修向け商品や技術推進による新製品の開発、NETIS*(新技術情報提供システム)登録製品の導入などを積極的に進めています。また、地盤改良用の特殊な建機を豊富にラインナップ
しているうえ、グループ内の会社にも地盤改良のスペシャリストが揃っており、大深度工事や水中工事、陥没・沈降の万全な予防を必要とする石油コンビナートなどの工事にも寄与しています。
これら土木特殊機械の需要は、P26~27に掲載しているようにASEAN諸国でも旺盛です。国内のみならず、海外のインフラ整備事業でも当社建機は活躍しています。
*国土交通省「公共事業等における技術活用システム」によって蓄積された技術情報のデータベース
2018 | 2023 | 2028 | 2038 | 2048 | 30年間合計 (2019~2048) |
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道路 | 1.9 | 2.1 - 2.2 | 2.5 - 2.6 | 2.6 - 2.7 | 2.1 - 2.2 | 71.6 - 76.1 |
河川等 | 0.6 | 0.6 - 0.7 | 0.6 - 0.8 | 0.7 - 0.9 | 0.7 - 0.9 | 18.7 - 25.4 |
下水道 | 0.8 | 1.0 - 1.0 | 1.2 - 1.3 | 1.3 - 1.3 | 1.3 - 1.3 | 37.9 - 38.4 |
港湾 | 0.3 | 0.3 - 0.3 | 0.2 - 0.3 | 0.2 - 0.3 | 0.2 - 0.3 | 6.0 - 8.3 |
その他6分野 | 1.6 | 1.6 - 1.8 | 1.3 - 1.4 | 1.2 - 1.4 | 1.6 - 1.7 | 42.3 - 46.4 |
12分野合計 | 5.2 - 7.1 | 5.5 - 6.0 | 5.8 - 6.4 | 6.0 - 6.6 | 5.9 - 6.5 | 176.5 - 194.6 |
※2018年度の値も推計値 ※河川等は、河川・ダム、砂防、海岸の合計
※6分野は、空港、航路標識、公園、公営住宅、官庁施設、観測施設
出所:国土交通省資料「国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計(2018年11月30日)」を基に作成
工事現場における調査、設計、施工から維持管理まで、その全プロセスにICT(情報通信技術)を導入することで生産性の向上を図る「i-Construction」。少子高齢化による若年就業者数の低下や熟練オペレーターの減少など、日本の建設業界が直面している深刻な労働力不足という課題に対する一つの解決策として国土交通省が推進しています。
2016年度からICT施工の工種として土工、舗装工(路盤工)、浚渫工、河川浚渫工と順次導入されてきましたが、2019年度から「ICT地盤改良工」と「ICT舗装工(修繕工)」が新たに本格導入されることが決まるなど、工期短縮や省人化に向けてi-Constructionの取り組みが加速しています。
政府は、ICT技術や人工知能(AI)の活用によるインフラ維持管理の効率化を成長戦略のひとつに位置付けているほか、「国土強靱化基本計画」において、インフラの災害復旧事業に無人運転による建設機械など最新のICT技術を最大限活用できるような対策の充実を大きな柱として据えています。
ICT・AI活用の気運が高まるなか、当社ではすでに「建設
ICT推進課」「IoT推進課」などの専門部署の設置や、i-Construction対応の建設機械の導入やシステム運用のサポートを実施しています。また、ニュープロダクツ室では建設機械の無線操縦を実現する「建設機械遠隔操縦ロボット」や、AIによる物体認識機能を搭載した建設機械の「接触防止システム」を開発・導入するなど、IoT・ICT関連技術を応用した機器の開発ニーズに対応しています。今後も一層の活発化が予想されるICT活用の建設生産システムに対応してまいります。